2015年10月30日金曜日

県庁申し入れ報告/「報道の在り方」に対する提言書賛同募集

◆福島県庁への申し入れ報告

10月10日の6号線清掃ボランティア活動への提言書に賛同いただいた団体のみなさま、ありがとうございました。

いただいた賛同の名を連ねた提言書は、10月9日に、6名で県庁に手渡しに行きました。

最初に行ったのは、道路計画課。
反対の主旨と、賛同団体が多数存在することをつたえ、後援の撤回および中止の申し入れ、被ばく低減策の提案要請を行ないましたが、担当者は「反対意見があったことは伝える」としたものの、要請に具体的に応じることはありませんでした。

その後、中等教育課、義務教育課にも同じ提言書を持って行きましたが、道路計画課よりも頑なな対応で

「近隣に人が住んでいるのに、掃除するのがなぜ悪いのか」

という論法でした。
今回の要請が、後援撤回や中止要請、被ばく防護につながらなかったことは本当に残念です。

しかし、担当者の雰囲気では、「今後の後援には慎重になる」と思われる対応も見られましたので、今後、こういったイベントに対する「県」としての対応を見守っていきたいと思います。

この県庁申し入れを受け、子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山では、「後援決定のプロセス」と、「寄せられた反対意見」について開示請求を行ないました。

多くの人が、FAX、電話、ハガキ等で県庁や学校宛にも反対の意見を届けていたことが分かります。
(開示した文書は、何等かの形で公開します)


◆報道の在り方に対する提言書 賛同団体募集

さて、本題に入ります。

今回の提言書の提出先は、「県庁」だけではなく、事前に「県政記者クラブ」も含まれていました。
県政記者クラブには、10月7日に投げ込んでいます。

10月10日のイベントには、多くの新聞社が取材に訪れていました。
翌日の報道には、県内の新聞を含め、いくつかの新聞で6号線のボランティア清掃活動についての記事が掲載されました。

その内容は、復興のために頑張る人々、というイベントの報告にとどまり、「反対意見が寄せられていた」ということは一言も触れられていませんでした。

くり返しますが、10月7日には、70団体にも及ぶ賛同団体が名を連ねた提言書が、県政記者クラブに届けられているのです。

この報道の在り方は、あまりにも不自然です。
「反対や不安の声が寄せられた」ということも、70団体にも及ぶ賛同団体があったことも、無視されてしまいました。
両論併記すらしない・できない報道の在り方は「偏向」であると指摘せざるを得ません。

また、イベント直後の報道には「反対意見」「不安の声」について触れられなかったものの、10月30日には主催団体に寄せられたセンセーショナルな言葉のみを取り上げ、「誹謗中傷」と断定した記事がネット上に配信されています。

こどけん郡山では、主催団体には提言書は提出せず、上記のように、安全が担保されていないイベントに対し県が後援することについて、県に対し、要請を行っています。
また、提言書には、詳細ルートが公開されていないこと、測定結果等の判断材料のないこと、被ばく防護策が取られていないこと、中高生が参加する必要性への疑問が書かれており、数多く寄せられた正当な反対意見や不安の声は、「誹謗中傷」として扱われ、報道から抹殺されようとしています。

このことに対し、県政記者クラブに、要請を行います。
今後の報道の在り方について、報道倫理規範に立脚した報道の公平性を強く求めるものです。

要請文は以下の通りです。
賛同くださる団体の方は、

子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山
武本
y-tkmt088★dolphin.ocn.ne.jp(★を@に変える)
まで、11月3日(火)までにメールにてご連絡ください。

この要請文は、来週中に届ける予定です。
県民・国民の「知る権利」をうばうことは、許されることではありません。
どうぞ、ご賛同ください。

「報道の在り方に対する要請文」
















2015年10月9日金曜日

国道6号線測定結果と、提言書の提出先について

提言書の賛同呼びかけから数日で、70団体近い賛同団体が集まりました。ご賛同の連絡をくださったみなさま、ありがとうございました。
全国からの賛同ですが、福島県内の団体、福島県から避難された方の団体からも、多数寄せられました。また、「個人での賛同は受け付けていないのですか」という問い合わせも何件かいただきました。

「主催団体には送らないのですか」
というお問い合わせもいただいたのですが、今回、直接はお送りしておりません。ネット上で拡散していただいたので、主催団体の方にも届いているかと思います。

この提言書を持って、本日、「後援(予定)」になっている福島県に申し入れに行くことになっています。
また、県教育委員会とも協議する場を持ち、掲載されている中学校・高校に「こういったイベントへの参加呼びかけは慎重になってほしい」と伝えてもらうよう、話します。

その際に測定データを持って行くためにも、107日、6号線をホットスポットファインダーで測定しました。主に、子どもたちが参加するとされている区間です。
スタート地点である二つ沼公園周辺と、いくつかの出発点周辺を徒歩で測定しています。
すべてのコース、すべての道路を徒歩で測定できたわけではありませんが、徒歩と車内測定を含めた結果をこちらにUPします。



測定全体のマップ
海沿いが6号線(行き)、内陸側が常磐道(帰り)の測定値

主催団体にも確認しましたが、「帰還困難区域」を含む活動コースは子どもは参加しないとのこと(掲載マップの富岡町④浪江町⑤)。また、楢葉町⑥も子どもは参加しないとのことでした。当然だと思います。

清掃ボランティア活動のチラシ


富岡町

浪江町

楢葉町

そもそも、「帰還困難区域」は二輪車も通行できないことになっています。
実際、測定中も、そこを通過しようとした二輪車は、警官に止められています。
ましてや、大人も含めた徒歩での無防備な清掃作業が許可されるとは思えません。仮に許可されたら、大問題です。

いちおう、参考までに6号線の帰還困難区域(清掃活動コースにはなっていない/車内測定)のマップもこちらに公表しておきます。

大熊町


大熊町

 
双葉町

車内と車外はどれほど違うのか、というのは、常磐道を通過したときに、車外測定値と車内測定値が分かるように写真を撮りました。

車内1.9μシーベルト/毎時
車外4.6μシーベルト/毎時
約2.4倍

車内0.3μシーベルト/毎時
車外0.6μシーベルト/毎時
約2倍


写真で分かる通り、車内測定値に対し、車外はおよそ、2倍~3倍の数値です。汚染はまだらですし、車を停めて測定したわけではないので参考程度ですが。(※詳細な数値・路肩の地表面等は測ってみないと分かりません)

車内で4.5μシーベルト/毎時

1年前の測定では、車内でも12μシーベルト/毎時を超えた場所もあった


車外に出られるところ(帰還困難区域以外)は、清掃活動コースになるであろう歩道を、一部、徒歩で測定しています。

広野町スタート地点付近

広野町スタート地点付近

南相馬市原町区

南相馬市原町区

浪江町


ちなみに、6号線は、20149月に通行可能になった頃に「除染・復旧が終了した」とされています。思いのほか「数値が低い」という印象を持つ場所もあるかと思いますが、念のため付け加えると、6号線から少し外れれば、数値の高いところは点在しています。

汚染はまばら。6号線からそれた道路は測定しないと分からない


たとえば、これは帰還困難区域で今回の清掃コースではありませんが、最も高い大熊町中央台交差点付近で、車外に出て、6号線から数メートル入っただけで、40μシーベルト/毎時近くまでいきました(2014年10月測定)。1年前の測定ですが、とんでもない数値です。

2014年10月 大熊町中央台交差点付近
38.927μシーベルト/毎時


こういった帰還困難区域を通行した車に付着した土が、30万ベクレル/kgを超えるということを、『科学』2015年10月号(岩波書店)で、小豆川勝見先生が指摘しています。


前置きが長くなりましたが、測定した上で、このイベントに対して感じた点は以下の通りです。



1)現在、6号線は工事車両が驚くほど多く、粉塵やほこり、排気ガスで「充満している」状況です。たとえ土曜日とは言っても、日曜日と比べると、交通量は「平日より少しだけ減る程度」であると、沿道の商店の店主が証言しています。そういった場で、マスク着用を義務付けることもなく、清掃活動を行うのは危険であると考えます。上記のような車の付着物が舞う可能性も考慮してほしいと思います。


ダンプトラックがずらりと並ぶ


2)道路の除染は確かに済んでいると思われるところもありましたが、局所的な汚染は点在していました。道路・歩道中央と路肩の土の数値は、2倍~20倍(徒歩での測定最大値は1.7μシーベルト/毎時:南相馬市原町区)の差があります。ゴミの多くは路肩の土の上にあるので、その危険性をしっかり参加者希望者に伝えてほしいと思います。

南相馬市原町区の6号線路肩で1.7μシーベルト/毎時


3)ゴミは確かにありましたが、1000人の参加者で拾うほどのゴミはありませんでした。子どもも数百人の参加があると聞いていますが、やる気のある参加者であればあるほど、道路の奥のほうまで行く可能性や、触れなくてもいいものまで触れてしまう可能性もあります。せめて大人だけを募る方法で良かったのではないかという印象を持ちます。

歩道が0.1~0.2μシーベルト/毎時でも、土の部分はその2倍~数十倍になる


4)道路除染の済んでいるところもあるようですが、「ここは除染していないのでは」と思われる区間もありました。特に、相馬市の活動ルートとなる道の駅周辺の路肩の土の上の空間線量は、他の区域よりも高めの数値が出ています。(0.3μシーベルト/毎時~0.7μシーベルト/毎時)


相馬市道の駅そうま付近 土の部分で0.3~0.7μシーベルト/毎時


5)交通量については1)で指摘しましたが、歩道のない所では、まさに命がけの測定でした。すれすれのところを、ものすごいスピードのダンプトラックが通過していきます。ちなみに、測定を行った107日に、国道6号線を走るダンプトラックが横転事故を起こしていました。
   この事故にもしも人が巻き込まれたら――積み荷が覆土ではなく、除染土であったら――と考えると心配は尽きません。

ぎりぎりのところを車が走る場所も


今回の測定以外にも、6号線の測定をネット上にUPした貴重なデータ(帰還困難区域含む)を公開してくださっている方が多数います。本来は主催団体が公表すべきものですが、参加を考えている方に、ぜひ検討材料として、届いてほしいと思います。



20151004国道6号線の自転車、徒歩による測定など 一斉清掃にむけて

「国道6号線 消えない夜さんによる測定」

「常磐道、国道6号線(帰還困難区域)の放射線量測定 消えない夜さんの動画を中心に」

6号線の自転車・徒歩による測定1 道の駅ならは周辺」

6号線の自転車・徒歩による測定2 楢葉町役場から富岡方面」

6号線 自転車・徒歩での測定3 富岡町 双葉警察署前から南」

グーグルアースで確認できるkmlファイルのダウンロードリンク


2015年10月6日火曜日

「みんなでやっぺ!!きれいな6国」の 開催およびボランティア参加呼びかけに対する提言書

★賛同団体はもう〆切ました★
こどけん郡山(080-1809-3169
☆賛同団体、追記しました(10.11)☆

NPO法人ハッピーロードネットがきたる2015年10月10日に開催する「みんなでやっぺ!!きれいな6国」での道路清掃ボランティア活動に、周辺住民および中学校・高校に対し、参加呼びかけを行っています。

それに対し、子どもたちの未来と健康を守るプロジェクト・郡山では、イベント開催とボランティア呼びかけに反対する提言書を作り、賛同団体を募りました。

わずか2日間の間に53団体から「賛同します」という連絡がありました。


本来、清掃ボランティア活動というのは、尊い活動です。震災前から続けて来られた主催団体の活動には、心から敬意を表します。


しかし、原発事故後からわずか4年半で、自動二輪、原動機付自転車、軽車両及び歩行者の通行を規制されている帰還困難区域を含む周辺道路の清掃ボランティア活動の開催には反対せざるを得ません。

「規制されている道路をなぜボランティアが清掃しなくてはならないのか」
「なぜ詳細な線量マップ・土壌汚染データ等が示されないままにボランティアを募っているのか」
「なぜ中学生・高校生が参加しなくてはならないのか」
「開催時に、どの程度の安全性を確保しているのか」
ということへの説明も不十分です。

本来、《目に見えるゴミをなくし、故郷を美しくしたいという人々の善意》と《目に見えないゴミが、人々へ与えるリスク》を天秤にかけることそのものが、おかしな事態であり、疑念と違和感、憤りの矛先は主催団体だけに向けるものではありませんが、このような活動の開催および呼びかけの撤回を求め、人々の無用な被ばくをなくしてほしい主旨で、提言書を公表します。

提言書は以下の通りです。









呼びかけ団体/賛同団体は、以下の通りです。


呼びかけ団体:
     子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山
     武本泰(080-1809-3169)

       
賛同団体:
     一般社団法人 子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト
     ママレボ出版局
     かふぇぷらす郡山
     Team毎週末みんなで山形 
     hand to hand project kawamata
     NPO アースエンジェルス
     はみんぐBird
     いわきの初期被曝を追求するママの会
     子ども脱被ばく裁判の会
     会津放射能情報センター
     ウィズキッズ(兵庫)
     NPO法人 新宿代々木市民測定所
     放射線量測定室・多摩
     角田市民放射能測定室
     小金井市に放射能測定室を作った会
     子ども脱被ばく裁判 支える会・高槻
     厚木市民測定所(ままラボ)
     NPO法人 子ども全国ネット
     横浜市民測定所
     NPO法人 市民放射能監視センター ちくりん舎
     災害避難者の人権ネットワーク 星の対話プロジェクト
     にしとうきょう市民放射能測定所 あるびれお
     秋田放射能測定室「べぐれでねが」
     子どもたちに未来をわたしたい・大阪の会
     つながろうフクシマつながろう避難者の会
     京都原発研究会
     日本消費者連盟関西グループ
     東日本大震災避難者の会 ThanksDream
     ぴあ・ネット/100万年の会
     クライストチャーチの風
     ボイス・オブ・ヒロシマ
     地域に生きる川西市民の会
     美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
     福島老朽原発を考える会
     世田谷こども守る会
     こどもを守る会 いるま
     入間から発信!ずっと暮らし続けるために動く会
     放射能からみんなの健康といのちを守る秩父の会
     フクシマの子どもの未来を守る家
     Mamademo(ママデモ)
     原発震災から子どもの未来を考えるネットワーク
     基地のない平和で豊かな沖縄をめざす会 大阪
     グリーンフォレスト関西
     せいぶらいふあくしょん
     放射能から子ども達を守る枚方の会
     大阪の公害問題を考える会
     滋賀県放射性チップを告発する会
     大阪・放射能ガレキ広域化差止め裁判原告団
     特定非営利活動法人 R.I.La
     小さき花市民の放射能測定室(仙台)
     たまあじさいの会
     脱被ばく実現ネット
     原発なくせ三重県民会議
     もろびと平和サークル
     原発おことわり三重の会
     nara-action
     子ども笑顔ネット
     オルタナティブ・ピース・アクション
     子ども脱被ばく裁判おうえん@東京里芋
     放射線被ばくを学習する会
     ひなん生活をまもる会
     神戸国際キリスト教会
     3.11ゆいネット京田辺
     原発の危険から子どもを守る北陸医師の会
     県境なき医師団
     支援交流『虹っ子』
     NPOあおいとり札幌
     森の測定室滑川
     みんなの測定室・ふじみーる
     千代田区こども守る会
     脱原発・滋賀☆アクション
     八王子市民放射能測定室 ハカルワカル広場
     NPO法人市民環境研究所
     こども検診医療基金・関西

(賛同連絡順)

2015年9月18日金曜日

郡山測定レポート(8)

2015年4月29日、郡山市大槻町周辺を測定しました。


■「自宅の裏に、震災後、はじめて来ました」

 福島県郡山市の通学路を測定しはじめてから、このレポートも8回目。お母さんと一緒に測定をしながらさまざまな思いを聞いています。
 
 「原発事故がなければ、こんな風に不安になることもなかったし、測ってまわる必要もなかったのにね・・・」



 汗ばむ陽気のなか、ホットスポットファインダーで測定しながら、そう話すのは、子どもたちの未来と健康を守るプロジェクト・郡山の根本淑栄さんと、4人の子どもを持つHさん。

この日はまず、Hさんの自宅周辺を測定しました。
Hさんの自宅は、まだ除染がまわってきていません。住宅除染の順番は、郡山市が決めています。
事故から4年以上が経過した今年、ようやく番が回ってくるそうですが、それも「手あげ式」で、手をあげなければ、除染してもらえないのだそうです。

4歳のお子さんがいるHさんは、原発事故後、子どもを外で遊ばせることがほとんどありませんでした。1ヶ月に1度、県外や放射線量の低いところに子どもたちを連れだし、外遊びをさせてきています。それも、夫婦共働きのHさんにとっては「とても大変なこと」だったと話します。
ご両親の家とご自宅が2軒つらなる広い敷地内でも、震災後は子どもたちが駆け回ることはなく、通路となっている小道を行き来するだけでした。

自宅の裏を測定しているときにHさんは

「ここに来るのは実は震災後はじめてです」

と言いました。その理由を尋ねると、

「放射線量が高いと思っていたんです。おじいちゃんは、掃除をしたり、自分で除染をしたりしていたけれど・・・」

裏には畑も広がっているのですがそこにも立ち入ったことがなかったそうです。
測定器を頼りに、Hさんはおそるおそる進みます。

「少しでも線量が低いエリアが見つかれば、そこで子どもを遊ばせることができる」

そうHさんは考え、慎重に、丁寧に測定をしていました。



おじいちゃんによる除染の効果か、幸い自宅敷地内で1μSv/hを超えるような場所は見つかりませんでしたが、ところどころ、0.5μSv/hを超える場所がありました。「とても高かった」という雨どい周辺は0.6μSv/hを超え、周辺一帯は0.40.5μSv/hを示しました。
測定の様子を見に来ていたおじいちゃんは

「ここ(雨どい)からどーっと雨水が流れおちて、汚染が広がったのだろう」

と話します。
最初は

「高くなんかないだろう、大丈夫だろう」

と言っていたおじいちゃんも、

「どうだ、高いところはあったか・・・」

と気にしている様子で、測定中に何度か話かけてきました。

「除染なんかしたって意味がないんだ、また上がってしまうんだ、って知り合いの除染作業員が話していたよ。うちは、これから回ってくるんだけどね・・・」


■住宅街で見つけた5μSv/hのマイクロホットスポット

 次に向かったのは郡山市にあるとある学校。通りすがりの私たちに向かって、生徒が「こんにちは」と声をかけます。「挨拶に力を入れている学校なんです」と根本さんは教えてくれました。
 
 「ここでよく、学生が立ち話している」

Hさんが教えてくれた校門のブロックは、ちょうど腰かけるのにいい高さです。そこは、0.5μSv/hほどありました。

「ここには座ってほしくないね・・・」

Hさんはつぶやきます。

グラウンドでは野球部が練習をしていました。敷地内からも、外にいる私たちに向かって「こんにちは」と挨拶をする生徒たち。学校周辺は除染が済んでいるのか、0.20.3μSv/hの数値を示していました。
 ただ、学校側の道路と、民家側の道路では測定値が0.1μSv/hほど違いがありました。1本の道路でも、両サイドで数値が違うのです。

「学校側は除染はされるけれど、民家側は除染されていないのかもしれないね。でも、生徒が学校側だけを選んで歩くわけではないのに・・・」


そこから少し歩き、菜根三丁目わんぱく広場に向かいました。ある民家の前で、突然数値が跳ね上がりました。立ち止まり、線源を探してみたところ、5μSv/hを超える場所が見つかりました。ちょうど雨どいから流れ落ちるところにコンクリートの割れ目があり、そこに放射性物質がたまってしまったようです。





しかし、この地域は、平成24年に道路除染が行われており、表向きには「線量が下がった」と思われている地域です。また、住宅除染も平成24年に発注が済んでいます。
この場所は民家と民家のちょうど隙間にあたるので、どちらの敷地として除染されるのか不明です。このように、除染から抜け落ちてしまった場所が他にもあるのです。


■再測定――さくら通り沿い1.8μSv/hのベンチへ

このあと、私たちはHさんと別れ、郡山市を東西に走る幹線道路・さくら通りの測定を行いました。以前も線量の高かった、ザ・モールというショッピングセンターの前にあるベンチの線量がどうなっているのか、確認するためです。





以前と変わらず、1.5μSv/h近くあることを確認し、郡山市の道路除染推進課に連絡をしました。
担当の方が、すぐに測定に向かい
「再測定したところ、ベンチの下は2μSv/hを超えていた」
と教えてくれました。
「この道路が県の管轄なので、県の担当に連絡し、県から連絡してもらうようにします」
とのこと。

その翌日には、県の担当から連絡がありました。
「何らかの対応をします」
とのこと。

あれから5か月。いまのところ、対応した、という連絡はいただいていませんが、すでに除染されているのかもしれません。
その後の数値の変化も、測定してみようと思います。

本来あってはならない数値が、あちこちに点在している事実。細かな測定を行い、行政に訴えていくことの大切さを感じています。

その一方で、冒頭の根本さんの言葉も忘れてはならないと感じます。
「原発事故がなければ、こんな風に不安になることもなかったし、測ってまわる必要もなかった」ことを。




郡山レポート(9)につづく

2015年4月4日土曜日

郡山測定レポート(7)


2015年41日、郡山市薫小学校の通学路を測定しました。
同行したAさん(6歳と4歳のお子さんがいるお母さん)は、一時期、福島県外に自主避難をしていました。6歳のお子さんが4月から小学校に入学するため、放射線量の高いところを確認しておきたい、ということでした。

薫小学校の周辺は、原発事故当時も、放射線量が高いと言われていた地域。学校や公民館、公園などの除染は終わっていましたが、その後、どうなっているのか――ホットスポットファインダーで、細かく測定しました。

驚いたのは、薫小学校の除染前の数値。校門には「4.5μSv/h」と書かれています。

郡山市薫小学校の校門


おそらく、測定したのは2011年だとは思いますが、例えば、20117月、南相馬市の特定避難勧奨地点に指定された基準値は、3.0μSv/h以上/子ども・妊婦の基準では、2.0μSv/h以上で勧奨地点に指定されているのです。
今さらながら、こういった大きな矛盾を突き付けられます。

Aさんは測定中、ずっとビデオカメラを回していました。測定に立ち会えないお子さんに、どこが高いのかを細かく教えたい、との思いです。私たちは、Aさんの住まいから学校に向けて歩き出しました。
今回、測定するにあたり、センサーの高さは地表50cmあたりをキープすることにしました。お子さんの腰のあたりです。

家の前の歩道から、0.50.7μSv/hを記録します


自宅の目の前で、0.5~0.7μSv/h(地表50cm)


今まで、郡山市は通学路も含めて何度も測定に伺っているのですが、2015年になって地表50cmで歩道が0.50.7μSv/hもある場所というのはあまりありません。
アスファルト上であれば、0.20.4μSv/hまでは下がってきているのです(ただし、土の上は0.51μSv/hほどあるところも多く、局所的に1.5μSv/hを超えるところもあります)。

この日、測定したアスファルト上で一番高かったのが、この家の前の歩道(0.50.7μSv/h)だったのです。
その原因は、透水性舗装。写真のような形状のアスファルトでした。

透水性舗装


透水性舗装の上は、除染をしても線量が落ちません。
以前にもお伝えしたことがあるのですが、(郡山レポート・4)郡山市明健中学校の前にある遊歩道も、0.50.7μSv/hあり、その測定結果を持って、郡山市在住のNさんが郡山市長に訴えたことがありました。
訴えた結果、近くの沼(宝沢沼)の遊歩道と一緒に、緊急除染がなされました。
しかし、その後、半年後にその遊歩道の測定をしたところ、放射線量は下がっていなかったのです。

同行したAさんは、

「この歩道のところだけでも、おんぶしたい」

とつぶやいたあと、

「アスファルトをはがして、舗装しなおしてもらいたい。そのことを、市にお願いしたい」

と話していました。
また、その歩道に関しては、側溝の上を歩くほうが、被ばく量が少ないこともわかりました。透水性舗装の上を歩くより、側溝の上を歩くほうが0.3μSv/hほど低かったのです。

「ふつうは、側溝の上のほうが高い、と思いますよね・・・測ってみないと本当に分からないですね」

と、Aさん。

この道は、側溝の上のほうが放射線量が低い


学校周辺を測定したあと、近くの公園を二つ測定しました。
一つ目は学校のすぐ近くの公園。いちおう、除染が済んでいる公園です。歩き回りながら、高そうなポイントも測定しました。すべり台の下、ブランコの下、植え込みの中――測定結果は、0.10.2μSv/hでした。

「この公園だったら『遊んでもいいよ』と言えるかな」

Aさん。

薫小学校周辺測定結果/写真左下が公園


「震災後に、郡山市の公園で遊ばせたことはありません。室内遊び場につれて行くか、週末に県外に連れ出して遊ばせていたから・・・でも、小学生になったら、行動範囲も広がってそういうわけにもいかないだろうと思っていたから、『この公園ならいいよ』と言える場所ができてよかった・・・」

次に、自宅から一番近い公園を測定しました。Aさんは、自宅からたった数10メートルの公園に、震災後は一度も連れて来なかった、と言います。
実はこの日、測定には下の4歳のお子さんが一緒でした。元気いっぱい、動きたい盛りの男の子。

「この公園、生後3週間くらいの時に来たっきりだね。覚えてる?(笑)」

とお子さんに話しかけるAさんの声が届くか届かないかで、遊具に向かって思いっきりかけ出しました。

この公園は、除染されていたのですが、広場の真ん中だけが土の入れ替えがされただけで、公園の周囲の植え込みは1μSv/hを超えるところが数か所ありました。木の根本の苔の上では1.5μSv/hを超え、落ち葉の集まるところは0.8μSv/hありました。

木の根本の苔の上



地表10cmほどで測定。落ち葉がたまっているところ。


また、土の入れ替えがされていないところは、0.40.8μSv/hのところも。

「この公園は、まだ、行っていいよ、と言えないな・・・」

Aさんはそう話しました。

砂場遊びの道具を、

「数回しか使っていない。未練があって捨てられない」

と話すお母さん。逆に、

「使えなかったことが悔しいから、すぐに処分した」

というお母さん。こういった思いが、一部の地域の母親に押し付けられていることは、事実です。

公園の再除染、透水性舗装の張り替え等、子どもの生活環境について、行政には丁寧な対応をしてもらいたいと願っています。

~~~~~

今日の測定結果の一部を公開します。
1枚目は、薫小学校周辺の放射線量です。公園は、0.10.3
2枚目は、薫小学校から少し離れた公園。やはり、植え込みなどの周辺が高いことがわかります。





(文責・吉田千亜)