2016年12月29日木曜日

こどけん通信 vol.2ができました!

こどけん通信 vol.2が完成しました!
こどもみらい測定所の石丸偉丈さんの土壌測定の話、疋田香澄さんの保養の話など、とても大切なことが書かれていてます。ぜひお手に取ってみてください。価格は300円です。
ご注文いただき次第、随時発送させていただきます。



content

●土壌の測定から見えてくるもの
 安全の基準はシーベルトからベクレルへ――石丸偉丈さん
●保養について語ろう
 実態調査の報告――疋田香澄さん
●福島のリテラシー
 甲状腺検査縮小報道を読む――coba2011
・「ただちに危険はありません」
・測ってみました 測定マップ
・子どもたちの視線 別海町の保養から
・測定所より 牛乳を測ってみると

価格 300円

ご注文は、こちらのメールアドレスまで!

kodoken2@gmail.com

送料
1冊 180円 40冊まで360円

荒木田岳先生から中学生たちへのメッセージ

【自分の頭で考え判断する強さを――】


2016113日、「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」は郡山市で中学生とその保護者を対象として、福島大学の荒木田岳先生を講師に勉強会を開催しました。
参加者は30名ほど。荒木田先生には「自分の身を守るためには何が大切なのか」をお話していただきました。



 冒頭に先生が示したお話の結論、それは「自分の足でデータを集め、自分の目で見て、自分の頭で判断しよう」ということでした。「津波がきたら、各自ばらばらに一人で高台に逃げろ」という意味の「津波てんでんこ」は、他にかまわず、とにかくそれぞれが自分の身を守らなければみんなが生きのびることはできない、という、経験に根差した先人の知恵でした。原発事故も同じで、政府のいうことを聞いていたら自分の身は守れない。
 一つの問題に対して一つの正しい答えがあると信じさせるような受験勉強も、「自分の頭で判断する」ことの障害になりうる。しかし、現実の世の中は、一つの問題に一つの答えしかないわけではありません。「正しい」「科学的」「客観的」という言葉に惑わされず、「本当にそうだろうか?」と問うこと。自分の頭で考える習慣をもち、流れている情報が信頼に足るものかどうかを判断する力をつけ、自分がどういう行動を選ぶのかを考えてほしい、というのが、荒木田先生のメッセージだったと思います。


 また、荒木田先生は被ばく防護がおろそかになっている現実を懸念し、「脱被ばく」の実践の障害になるのは、「同調圧力」「同化圧力」であり、(放射線への)不安をないことにする「自己抑圧」もあると言います。そして、「「私は私だから(被ばくの問題に向き合います)」と、表明するのは大変なことだけれど、強くなってください」としめくくりました。

お話のあと、参加した生徒たち一人ひとりが質問し、「慣れてしまったことは怖いことだと思った」と言う男の子も。保護者からも「(放射能汚染を)気にしながらも、こういった話を聞く場がほとんどありませんでした。貴重な時間でした」という感想がありました。

 子どもたちの健康と未来を守るプロジェクトでは、こういった勉強会を今後も開催する予定です。事前にこのブログでも告知いたします。
関心のある方はぜひご参加ください。

2016年9月1日木曜日

県民健康調査・甲状腺検査に関しての要望書を提出しました

「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山」の共同代表と、県内に住む母親3名の計4名は本日、福島県を訪れ、「県民健康調査・甲状腺検査に関する要望書」を提出しました。
県側で対応したのは、保健福祉部県民健康調査課・主任主査の福島秀行氏ら。
福島県での甲状腺検査規模縮小の動きを受け、こどけんが8月23日に要請書に対する賛同を呼びかけたところ、わずか1週間で国内119団体、海外5団体の合計124団体から賛同が集まっています。
(県民健康調査・甲状腺検査に関しての要望書の提出についての賛同のお願い http://kodomo-kenkotomirai.blogspot.jp/2016/…/blog-post.html

賛同くださった団体のみなさま、ありがとうございました。
今後の対応に注視したいと思います。

要望書の提出


賛同くださったみなさまへのお礼とご報告


詳報は、和田秀子さんのFacebook記事をご覧ください。

以下、要望書の最終版です。
賛同団体のお名前も記載させていただきました。


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                    2016年9月1日


福島原発事故後の小児甲状腺がんに関わる関係者のみなさまへ

〒960-8670
福島市杉妻町2番16号
福島県保健福祉部県民健康調査課 御中

〒960-1295
福島市光が丘1
福島県立医科大学 御中

〒960-8670
福島市杉妻町2番16号
福島県保健福祉部県民健康調査課内
福島県県民健康調査検討委員会 御中


                    子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山

       県民健康調査(特に甲状腺検査)のあり方などについて (要望)

 昨今、県民健康調査、中でも甲状腺検査のあり方や、福島県内で発見されている小児甲状腺がんについて、関係者や研究者の中から、様々な意見や知見が発信されています。このように、多彩な議論が展開されることは、被ばくとの因果関係などを解明する上で、必要不可欠であり、決して否定されるべきものではありません。
 しかし、これらの中には、関係者としての責任感に疑念を抱かざるを得ないもの、研究者としての公正な立場を逸脱しかねないものなどが散見されます。
 そこで、福島県内で実施されている甲状腺検査や、これら検査で発見されている小児甲状腺がんに関わる関係者や研究者のみなさま方には、甲状腺検査の目的に立ち返り、苦悩し続けている福島の子どもやその保護者に心を寄せて、より一層真剣に取り組まれることをお願い申し上げます。
 そのうえで、下記の事項について、特に要望いたします。

               < 要 望 事 項 >

○ 第一  甲状腺検査の阻害要因となりかねない発言について
 一部の関係者や研究者が、「甲状腺検査を受けない選択肢もある」「甲状腺検査対象を縮小すべき」などと、検査見直し論を積極的に唱えています。
 そもそも、甲状腺検査は「子どもたちの健康を長期的に見守り、県民の不安に寄り添う」ことを主たる目的として開始されています。
 そして、放射線起因の小児甲状腺がんのみならず、小児甲状腺がんそのものについても、その病態は解明途上にあるというのが共通認識かと思います。
 さらに、福島原発事故による放射線被ばくと小児甲状腺がん発症の因果関係についても、初期被ばく線量などが十分に把握されておらず、県民健康調査検討委員会でも、解明すべき重要な課題の一つとなっています。
 また、福島県立医科大学は、“今後適切に検査を繰り返し、その結果を慎重に見ていくとともに、第20回検討委員会で発表した、平成27831日付「放射線被ばくの影響に関する調査研究について」にて掲示した3つの調査研究および、今後追加で必要と判断した調査研究等を通じて、福島県における放射線被ばくの影響の解明に取り組む所存です”と述べています(本年1月7日付け当会宛回答書より引用)。
 そのような中で、現行の甲状腺検査を維持、継続することは、甲状腺検査の目的に叶い、実態を把握し、放射線被ばくとの因果関係を解明する上で最低限、必要不可欠なものです。
 縮小すべき等の見直し論は、あまりにも早計であり、甲状腺検査の目的からも逸脱し、不安の解消に結びつきません。また、このような見解が発信されることによって、検査の受診率の低下を招く可能性もあり、甲状腺検査の阻害要因となりかねません。
 今後、このような発言には厳重に留意いただきたく要望申し上げます。


○ 第二  幅広い地域での甲状腺検査の実施について
 福島県および福島県立医科大学は、“他都道府県で福島県と同様の検査をした場合に、類似する結果となる可能性は高いと思われます”と述べています(本年1月7日付け当会宛回答書より引用)。
 つまり、小児甲状腺がんの多発が他の地域でも予見されるという認識をもち、加えて、当然ながら、放射性物質の拡散とその影響には県境はありません。
 であれば、広範に甲状腺検査を実施すべきであることは明白であり、医療従事者として当然の責務と考えます。
 ついては、被ばくを受けた、福島県以外の都道府県での甲状腺検査の実施を要望します。


○ 第三  手術の妥当性について
 県民健康調査検討委員会や、昨今の一部の研究者による学術発表では、福島で発見されている小児甲状腺がんと放射線被ばくとの因果関係については否定される傾向にあります。
 そして、「精度の高い検査を行うことで“潜在がん”を発見している」、「一律のがん検診による“死亡率の低下”というメリットが生じにくいため検診は世界的に推奨されていない」という意見のみならず、「検査を受けること自体が受診者の不利益になり得る」という意見までもが報道されています。
 さらに、福島県や福島県立医科大学からは、同様の検査を実施した場合、他都道府県でも、福島県と類似の結果が得られるとの認識までもが示されています(本年1月7日付け当会宛回答書より引用)。
 表明されているこれらの見解に依拠した場合、これまで甲状腺検査でがんが発見され、手術を受けた福島県の子どもたち約130人は、死亡率の低下が期待できない検査、つまり不要とも言うべき検査で潜在がんを見つけ出され、挙句の果てに放置してよかったがんに手術を施された―――という理解をせざるをえなくなります。
 あるいはもし、福島の130人の子どもたちには必要な手術がなされたのだとし、そして、福島県以外の他都道府県の子どもたちにも、福島県と同程度の小児甲状腺がん(潜在がん)が確認されるだろうと類推するのであれば、彼らにも必要な手術や治療がなされるべきであり、そのための検査が実施される必要があります。
 そのため、福島県で発見されている小児甲状腺がんが、放射線起因でないとすると、福島県と他都道府県の子どもたちへの対応には深刻な矛盾が生じていることとなります。
 このような矛盾を放置せず、これまで甲状腺検査で発見された小児甲状腺がんの手術の妥当性について、公正な立場で、可及的速やかに再検証することを要望します。


○ 第四  研究者の公正な立場について
 医学研究を含め科学研究は、さまざまな事象に関して、その成り立ちや理由について真理をとらえて解明するものです。そのため、科学者は研究について「注意深くデータを集め、適切な解析及び統計手法を用いて、その結果を正しく報告」しているものと信じています。また、私たちは「科学研究によって得られた結果は研究者の誠実で正しい考察によるもの」と信頼しています。
 その上で、先にも述べましたが、小児甲状腺がんは未解明の領域が多く、さらに、福島で発見されている小児甲状腺がんについては、放射線起因か否かなど、未だ専門家の間でも議論のあるところです。そのため、科学者は、自らと異なる特定の議論を排除することなく、幅広い知見の下で、被害者の立場に立った研究や予防原則の立場での公正な科学研究に邁進すべきであり、そのことによって社会的に役割を果たし、福島県民および幅広く市民社会からの信頼を獲得すべきものと考えます。
 公的な役割として、さまざまな研究成果や知見に誠実に向き合い、真理の解明に道を開く研究が進められることを切望するものです。


○ 賛同団体について
 国内122団体、海外5団体、合計127団体から賛同をいただきました。なお、賛同団体名は、別紙をご参照ください。


○ 問い合わせ先について
  子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山
  電話番号 080-1809-3169
  メールアドレス support-fukushima@road.ocn.ne.jp



○ 賛同団体(賛同受け付け順)
001  子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト
002  NPO法人 子ども全国ネット
003  子ども脱被ばく裁判の会
004  ママレボ出版局
005  山の家きょうどうを支える会
006  こどもみらい測定所
007  ママの会@たま
008  3.11ゆいネット京田辺
009  虹とみどりの会
010  緑ふくしま
011  安心安全プロジェクト
012  福島原発30キロ圏ひとの会
013  「子ども脱被ばく裁判」を支える会・西日本
014  かふぇぷらす郡山
015  「子ども脱被ばく裁判を支える会・西日本」内支える会・大阪神愛教会
016  いのち・未来うべ
017  休日奉仕隊
018  いわきの初期被曝を追及するママの会
019  ウィズキッズ
020  hand to hand project kawamata
021  京都原発研究会
022  風の町の未来´s
023  非営利公益市民活動団体
024  はみんくBird
025  Fukuみみ*ラボ
026  尾道 ひなの会
027  うみ、やま、ひと広島バカンス実行委員会
028  うつくしまふくしま未来ネットワーク
029  「福島の子どもたちとともに」川崎市民の会
030  NPO法人 新宿代々木市民測定所
031  小金井市に放射能測定室を作った会
032  放射線量測定室・多摩
033  NPO法人 ファーム庄野
034  内部被曝から子どもを守る会・関西検診プロジェクト
035  白井子どもの放射線問題を考える会
036  なかのアクション・福島子ども保養プロジェクト
037  原発学習交流会・大阪
038  ひらかた 被災者とともに考えできることからやろう会
039  たまあじさいの会
040  NPO法人「ちくりん舎」
041  手をつなぐ3.11信州
042  子どもたちを放射能から守る信州ネットワーク
043  子どもたちを放射能から守る伊豆の会
044  地球の子ども新聞
045  角田市民放射能測定室
046  NPO法人 R.I.La
047  脱被ばく実現ネット
048  県境なき医師団
049  絆ジャポンーモントリオール
050  福島~山口 いのちの会
051  Sayonara Nukes Berlin
052  南紀おたすけ隊
053  原発いらない福島の女たち
054  子ども脱被ばく裁判支える会・東日本
055  子どもを守ろう水曜文科省の会
056  川内脱原発テント
057  経産省前テントひろば
058  脱原発はりまアクション
059  ストップ原発&再処理・意見広告の会
060  北海道檜山地方保養受入連絡会だっこんび桧山
061  福島こども支援・八王子
062  福島の子どもたちとともに・西湘の会
063  放射能から子どもを守る会春日部
064  子どもたちに未来をわたしたい・大阪の会
065  放射能から子どもの未来を守る調布の会
066  とちの実保養応援団
067  NPO法人福島の子どもたち香川へおいでプロジェクト
068  子供の未来を考える会ハチドリ
069  特定非営利活動法人青空保育たけの子
070  未来の社会を考える仲間達
071  石川県保険医協会原発・いのち・みらいプロジェクト
072  子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
073  ピース・フィロソフィー・センター
074  はっぴーあいらんど☆ネットワーク
075  兵庫県南部大地震ボランティアセンター
076  放射能から子どもたちを守る栗原ネットワーク
077  子ども脱被ばく裁判 支える会北海道
078  子ども脱被ばく裁判を支える会西日本・高槻
079  らる畑
080  放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会
081  原発災害情報センター
082  NPO法人みみをすますプロジェクト
083  生活クラブふくしま生活協同組合
084  新宿代々木市民測定所 伊東分室
085  西田勝・平和研究室
086  NPO法人 快医学ネットワーク
087  NPO法人 福島こども保養プロジェクト@練馬
088  放射能から豊中の市民・子どもを守る会
089  放射能から子供を守る会・塩谷
090  モントリオール9条の会
091  さよなら原発神戸アクション
092  こどもを守る会 いるま
093  入間から発信!ずっと暮らし続けるために動く会
094  東日本大震災避難者の会 Thanks Dream
095  福島応援プロジェクト茨城
096  常陸24条の会
097  保養ネット・よこはま
098  ひなん生活をまもる会
099  南相馬・避難勧奨地域の会
100  さくら・市民ネットワーク
101  放射能問題支援対策室いずみ
102  特定非営利活動法人有害化学物質削減ネットワーク
103  福島バッジプロジェクト
104  原発の危険から子どもを守る北陸医師の会
105  医療法人社団 一期会 ウェル歯科診療室
106  福島~山口いのちの会
107  山口県避難移住者の会
108  震災復興プロジェクト・神奈川
109  TEAM毎週末みんなで山形
110  JIM-NET
111  福島の声にみみをかたむけるプロジェクト
112  会津放射能情報センター
113  脱原発・滋賀☆アクション
114  1000人で支える保養プロジェクト
115  原発事故避難者に公的支援を求める会(沖縄)
116  合同会社フロンティアファーム
117  子どもと未来を守る小金井会議
118  福島の子どもを招きたい!明石プロジェクト(たこ焼きキャンプ)
119  東海第二原発再稼働ストップ日立市民の会
120  放射能汚染から子どもを守ろう@つくば
121  原発賠償京都訴訟 原告団
122  子どもたちの命と未来の勉強会
123  子ども脱被ばく裁判・支える会ニュージーランド
124  おいでませ山口♪ 定住支援ネットワーク
125  原発いらない牛久の会
126  ほうせんかの会
127  うつくしま☆ふくしまin京都―避難者と支援者のネットワーク
128  放射線被ばくを学習する会
129  森の測定室 滑川






2016年8月23日火曜日

こどけん通信 Vol.1 できました

『こどけん通信 vol.1』 ができました。→すみません、売りきれてしまいました!次号もぜひよろしくお願いいたします(2016年10月24日)

一般社団法人 子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト(=こどけん)は、2011年より、福島のお母さんたちとの座談会、健康相談会、勉強会、子どもたちの保養企画などに取り組んできました。郡山のメンバーは、放射能からの防護にかかわるさまざまな問題について、行政交渉や請願活動なども行ってきています。

2013年より、「通学路や居住環境がどのくらいの線量なのかわからなくて不安」という、特に小さなお子さんを育てるお母さんたちからの要望にこたえ、ホットスポットファインダーで測定し、それをデータマップにして配布し、行政への対応を求めるなどの活動を続けています。

荒木田岳さん、尾松亮さんのメッセージとともに、私たちの活動から見えてきた「福島の今」をみなさんにお伝えします。





≪ 目 次 ≫


『こどけん通信』発行にあたって
荒木田岳さんインタビュー
尾松亮さんインタビュー
測定の記録
 2013年
 2014年
 2015年
 2016年
おわりに


子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト 編
定価 300円
2016年8月15日発行

送料は 1冊 180円 2冊 215円 4冊まで 300円 10冊まで 360円 30冊 760円

問合せ先: kodoken2@gmail.com










県民健康調査・甲状腺検査に関しての要望書の提出についての賛同のお願い

一般社団法人 子どもたちの健康と未来を守るプロジェクトでは、県民健康調査・甲状腺検査に関して、福島県保健福祉部県民健康調査課、福島県立医科大学、福島県県民健康調査検討委員会に対し、要望書を提出します。
現在、賛同団体を募集しています。提出趣旨・要望事項に賛同してくださる団体は、8月31日(水曜日)までに下記連絡先宛、その旨をご一報いただければ幸いです。

○ お問い合わせ先
 子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山
 電話番号 080-1809-3169
 メールアドレス support-fukushima@road.ocn.ne.jp

< 提 出 趣 旨 >

 小児甲状腺がんや甲状腺検査の必要性などについて、様々な議論が展開されることは、被ばくとの因果関係などを解明する上で、必要不可欠であり、決して否定されるべきものではありません。
 要望書本文でも触れていますが、福島県内で多発が確認されている小児甲状腺がんについては、その原因が解明されておらず、放射線被ばくに起因する可能性は排除できていません。
 また、そもそも小児甲状腺がんについては、成人のそれと比較して進行が早い、所属リンパ節や遠隔臓器への転移が多く見られるなどとの見解もあり、その病態は十分に解明されていません。
 そのような状況であるにもかかわらず、現在、その解明に取り組むべき位置にある「専門家」から、甲状腺検査縮小や、検査を受けることを抑制することにつながりかねない発言がなされています。
 こうした議論は、あまりにも早計であり、甲状腺検査の目的である子どもたちの健康を長期的に見守り、県民の不安に寄り添うことからも逸脱し、不安がより深刻化することが懸念されます。
 放射線の影響や病態の解明に逆行し、混乱を増幅させるような発言や主張は厳に戒め、関係各機関が住民の不安に誠実に寄り添い、その社会的責務を果たすことを要望したいと思います。



 < 要 望 事 項 >

○ 第一  甲状腺検査の阻害要因となりかねない発言について
 一部の関係者や研究者が、「甲状腺検査を受けない選択肢もある」「甲状腺検査対象を縮小すべき」などと、検査見直し論を積極的に唱えています。
 そもそも、甲状腺検査は「子どもたちの健康を長期的に見守り、県民の不安に寄り添う」ことを目的に開始されています。
 そして、放射線起因の小児甲状腺がんのみならず、小児甲状腺がんそのものについても、その病態は解明途上にあるというのが共通認識かと思います。
 さらに、福島原発事故による放射線被ばくと小児甲状腺がん発症の因果関係についても、初期被ばく線量などが十分に把握されておらず、県民健康調査検討委員会でも、解明すべき重要な課題の一つとなっています。
 また、福島県立医科大学は、“今後適切に検査を繰り返し、その結果を慎重に見ていくとともに、第20回検討委員会で発表した、平成27831日付「放射線被ばくの影響に関する調査研究について」にて掲示した3つの調査研究および、今後追加で必要と判断した調査研究等を通じて、福島県における放射線被ばくの影響の解明に取り組む所存です”と述べています(本年1月7日付け回答書より引用)。
 そのような中で、現行の甲状腺検査を維持、継続することは、甲状腺検査の目的に叶い、実態を把握し、放射線被ばくとの因果関係を解明する上で最低限、必要不可欠なものです。
 縮小すべき等の見直し論は、あまりにも早計であり、甲状腺検査の目的からも逸脱し、不安の解消に結びつきません。また、このような見解が発信されることによって、検査の受診率の低下を招く可能性もあり、円滑な甲状腺検査の阻害要因となりかねません。
 今後、このような発言には厳重に留意いただきたく要望申し上げます。


○ 第二  幅広い地域での甲状腺検査の実施について
 福島県および福島医科大学は、“他都道府県で福島県と同様の検査をした場合に、類似する結果となる可能性は高いと思われます”と述べています(本年1月7日付け回答書より引用)。
 つまり、小児甲状腺がんの多発が他の地域でも予見されるという認識をもっています。加えて、当然ながら、放射線の拡散とその影響には県境はありません。
 であれば、広範に甲状腺検査を実施すべきであることは明白であり、医療従事者として当然の責務と考えます。
 ついては、被ばくを受けた、福島県以外の都道府県での甲状腺検査の実施を要望します。


○ 第三  手術の妥当性について
 県民健康調査検討委員会や、昨今の一部の研究者による学術発表では、福島で発見されている小児甲状腺がんと放射線被ばくとの因果関係については否定される傾向にあります。
 そして、「精度の高い検査を行うことで“潜在がん”を発見している」、「一律のがん検診による“死亡率の低下”というメリットが生じにくいため検診は世界的に推奨されていない」という意見のみならず、「検査を受けること自体が受診者の不利益になり得る」という意見までもが報道されています。
 さらに、同様の検査を実施した場合、他都道府県でも、福島県と類似の結果が得られるとの認識までもが示されています。
 表明されているこれらの見解に依拠した場合、これまで甲状腺検査でがんが発見され、手術を受けた福島県の子どもたち約120人は、死亡率の低下が期待できない検査、つまり不要とも言うべき検査で潜在がんを見つけ出され、挙句の果てに放置してよかったがんに手術を施された――という理解をせざるをえなくなります。
 あるいはもし、福島の120人の子どもたちには必要な手術がなされたのだとし、そして、福島県以外の他都道府県の子どもたちにも、福島県と同程度の小児甲状腺がん(潜在がん)が確認されるだろうと類推するのであれば、彼らにも必要な手術や治療がなされるべきであり、そのための検査が実施される必要があります。
 そのため、福島県で発見されている小児甲状腺がんが、放射線起因でないとすると、福島県と他都道府県の子どもたちへの対応には大きな矛盾が生じていることになり、医療過誤といっても過言ではないような状況にあるのではないでしょうか。
 このような矛盾を放置せず、これまで甲状腺検査で発見された小児甲状腺がんの手術の妥当性について、公正な立場で、可及的速やかに再検証することを要望します。


○ 第四  研究者の公正な立場について
 医学研究を含め科学研究は、さまざまな事象に関して、その成り立ちや理由について真理をとらえて解明するものです。そのため、科学者は研究について「注意深くデータを集め、適切な解析及び統計手法を用いて、その結果を正しく報告」しているものと信じています。また、私たちは「科学研究によって得られた結果は研究者の誠実で正しい考察によるもの」と信頼しています。
 その上で、先にも述べましたが、小児甲状腺がんは未解明の領域が多く、さらに、福島で発見されている小児甲状腺がんについては、放射線起因か否かなど、未だ専門家の間でも議論のあるところです。そのため、科学者は、自らと異なる特定の議論を排除することなく、幅広い知見の下で、公正な科学研究に邁進すべきであり、そのことによって社会的に役割を果たし、福島県民および幅広く市民社会からの信頼を獲得すべきものと考えます。
 公的な役割として、さまざまな研究成果や知見に誠実に向き合い、真理の解明に道を開く研究が進められることを切望するものです。