2014年11月18日火曜日

郡山測定レポート(1)

■ホットスポットファインダー(HSF)による測定

ホットスポットファインダー(HSF)という測量計があります。

小型の検出器と計測ソフトの入ったタブレット端末をつないだセットで、タブレットには測定値が一秒ごとに表示されるものです。衛星利用測位システム(GPS)と連動しているため、マップ上でも測定値を見ることができ、マップの保存も可能です。

特徴は、小型簡易測定器の40倍以上の感度を持っていること。
また、スペクトルが見られるので原発事故由来の放射性セシウムなのか、確認ができます。
測定器は肩からかけられるので、大人の腰の高さの線量を測定できます。

この測定結果は、「DAYS JAPAN」の表紙でもおなじみです。


また、千葉の市民放射能測定室「しらベル」も、機器を導入しています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20130509/CK2013050902000139.html


この、ホットスポットファインダーで郡山市を測定した様子をレポートします。(2013.5.15)



■モニタリングポスト周辺の除染とまだらな汚染

モニタリングポストの数値があたり一帯の数値かと思われがちですが、必ずしもそうではありません。「モニタリングポストを信用していない」という方もいらっしゃいますが、そもそもモニタリングポスト周辺だけではなく、全体が、まだらに汚染されていて、かつ、時とともに雨などによる移動もしているので、放射線量の数値に関しては「一帯を表示する数値」はない、と考えたほうがよいように思います。
数m先のモニタリングポストが0.4μSv/hを表示しているのにも関わらず、手元のホットスポットファインダーの数値は0.7μSv/hという公園もありました。

「モニタリングポストの周辺だけ除染してあるのではないか」という指摘もありますが、実際に福島県災害対策本部原子力班モニタリングチームも、「可搬型モニタリングポスト等設置施設(570箇所)における除染作業の実施状況について」という調査をしています。
その結果、実際に99ヶ所で除染されていたことが分かり、今後もモニタリングポスト周辺を除染した場合、事実を公表すると報告しているのです。(最新は平成26年3月31日に発表)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec_file/monitoring/etc/kahangatampjyosenjyoukyou140331.pdf


■ホットスポットに建つ家

郡山市に住む、Kさんのお宅に向かうクルマの中でも測定を続けましたが、0.15μSv/h~0.8μSv/hの変動がありました。だいたい、0.3~0.4μSv/hを推移していました。

Kさんの自宅近くの幹線道路から細い脇道に入ると、それまで0.3μSv/h周辺を推移していた数値が突然上昇し、0.8μSvになりました。その、線量の上がり方がとてもはっきりしていたので、驚くと、「脇道に入ったら突然高くなることは、事故数ヶ月後から知っていたんです」と、そのKさんはいいます。近所の方が2011年の夏頃に、線量計を手に入れ、測定してくれたそうです。

家の裏手は山。測ると、1μSv/hを超えます。
震災数ヶ月後は、玄関が2μSv/h以上あったと言います。
「だから0.3μSv/hと言われると『低くていいわね』という感覚になっちゃうんですよ(Kさん)」
室内も線量は高く、2階の子ども部屋が1μSv/hほどあったので、1階のできるだけ中央の部屋に子どもがいられるよう居場所を変えたとか。

「近所でいいから、子どもを避難させたい。ホットスポットになってしまったこの家よりはいいだろう、と思うんです(Kさん)」
何度も考えているが、そう簡単なことではありません。

「ここは子どもが幼稚園バスを待つ場所なんですが、どのくらいですか?」
とKさんに言われ、数値を確認すると、0.5~0.7μSv/h。
きっと以前はもっと高かったはずですよね、とため息混じりに言います。
子どもたちが震災直後にもよく遊んでいた、という場所も、同じく0.5~0.7μSv/hでした。

■罪のない子どもたちが奪われた権利

自宅周辺の線量が分かってからは、子どもたちは外遊びができなくなり、友達の家でばかり遊んでいる、と言います。
子どもが自由にのびのび外で遊ぶこと、自然と自由にふれあうことが叶わない現実が、ここにはあります。

(郡山測定レポート(2)に続く)



(文責/吉田千亜)
















郡山測定レポート(2)

2013年9月、こどもみらい測定所の所長、石丸偉丈さんと一緒に郡山市内をホットスポットファインダーで測定しました。(このレポートは2013年10月のものです)

石丸さんによるレポートもぜひ、お読みください。


測定レポートに入る前に、郡山市の除染計画について、疑問に思うことがあるので、書きます。
道路わきの草むらに一歩入ると、0.3~0.5μSv/hほど増える

郡山市の除染計画は平成25年1月に発表されています。
「平成25年8月末までに、市民の生活環境の年間追加被ばく線量を平成 23年8月末と比べて約 50%減少させることを目指します。特に子どもの生活環境は平成25年8月末までに、年間追加被ばく線量を平成 23 年8月末と比べて60%減少させることを目指します」とも書かれています。

実は、何もしなくても(除染をしなくても)、2年間でその目標の数値に近くなります。空間線量の物理的減衰が2年間で40%ほどあり、その数値に、風雨などの自然減衰が加わるわけです(1年で15%だと言う方もいます)。
目標値を設定した郡山市は、どの程度除染の効果を期待しているのでしょうか。
住民の中には「除染さえすれば状況は良くなる」と期待する方もいるはずです。何もしなくても、じつは2年で50~60%近く空間線量が減ることを知ると、なんとなく裏切られたような気持ちになります。
もちろん、すべてが無意味とは言いませんが、郡山市の除染目標値はもう少し高くても良かったのではないでしょうか。
(注:平成26年11月時点で、まだ除染が終わらないご家庭もあります。2014.11月加筆)

さて、測定についてのレポートです。
こどもみらい測定所の石丸偉丈さんと、郡山市内在住のAさんとBさん、そして私の4人で測定しました。

Aさんによると、郡山市による除染の順番がまわってくるのは、平成27年。郡山市が行うとしている除染計画期間の最後のほうです。
まともに待っていれば、原発事故から5年間のもっとも線量の高い時期に、行政による除染もなく、生活し続けるしかありません。行政による除染を待っていられないと、多くの世帯は、やむなく自分たちで(或いは業者に依頼して)除染を行っているのが現状です。

また、市から町内会に配られた「除染費用50万円」を資金に、地域ボランティアをつのって、通学路などを独自に除染した地域もあります。(この件については地元市民団体が、「市民に無用な被ばくをさせないでほしい」という4000筆の署名を、災害直轄室に届けています。)


この日は、今年3月にホットスポットファインダーで測定させていただいたBさんの自宅(郡山市測定レポート5月1日)に再び伺いました。
このお宅の線量が高いことは行政側も把握しています。Bさん宅の子どもの積算線量計の数値が、他の子どもに比べて高いということが分かったからなのだそうです。市の職員や教育委員会も足を運び、何度か空間線量を測定しています。
市による除染は、つい先月、ようやく終わったそうですが、Bさんは、「除染の効果が本当にあるのか心配」ということで、今回、Aさんと一緒に、もう一度同じ測定器で測ることになりました。

事故後、はじめて線量計を入手して測定ができた時、子どもの寝室が1μSvあり、驚いて、部屋を移動させた、という話は前回訪れた時に伺っていました。今も、1階の真ん中の部屋を子ども部屋にして、線量を気にしながら生活をされています。


郡山市内に入ると、それこそ1時間もしないうちに、0.2~0.3μSvを「低い」と思うようになってしまいます。

「たまに目にする1μSv/hだとか、事故直後の2μSv/hとか3μSv/hだとかを見ていたら、0.5も高いと思わないよ」

と苦笑するBさんに、

「0.3で『低い』と思うなんて、あなたもさっきより感覚おかしくなってきたね」

と指摘されました。

「どうしても周囲の線量と、比較しちゃうんですよ。本当は比較の問題ではないんですが、感覚が麻痺してしまうんです」

と、Aさん。

2階の寝室(事故直後1μSv/hあった)は、0.2~0.3μSv/hまで下がっていました。いくら事故直後より下がったとはいえ、子どもたちは引き続き1階の真ん中の部屋で寝ているそうです。
「遮蔽したほうがいいって教えてもらったんだ」と言ってみせてくださった2階の窓には、水を入れたペットボトルが並びます。



遮蔽のために並んだ水の入ったペットボトル
測定すると、窓ガラス部分(窓上部)より、ペットボトルの内側(窓下部)のほうが線量が低く、さらに、壁の下のほう(窓枠より下)が線量が低い、ということも分かりました。

実は、このお宅には震災後に産まれた小さな赤ちゃんもいます。

「この子はまだ背が低いから、室内の窓からの被ばくを、大人よりは免れているのかな・・・」

とBさん。



郡山市の、除染計画には、こう書かれています。

「市内全域の追加被ばく線量を長期的に年間1ミリシーベルト(高さ1メートルにおいて毎時0.23マイクロシーベルト)未満とすることを目指します。」

つい先日(2013年10月21日)、国際原子力機関(IAEA)専門家チームのフアン・カルロ ス・レンティッホ団長は、来日の際、

「(除染の目標として)必ずしも1ミリシーベルトにはこだわらない。」

と述べました。 
今後、この発言が国内にどう影響していくのか、注視しなくてはなりません。
 1ミリシーベルトにこだわらない理由は「利益と負担の バランス」だと言いましたが、結局、この「利益」は対象が大人です。そこに、子どもの「人権」の問題は存在しないのでしょうか。


そもそも、郡山市の除染計画は5年間で設定されていますが、子どもの生活はたった1年で事故前と同じ、通常通りになりました。校庭の水たまり(放射性物質が集りやすいと言われている)の水をスポンジで吸い取る作業も、子どもたちが地面に這ってやっていると、Aさんは子どもたち自身から聞いたそうです。

「たしかに校庭は除染されてはいるから、普段どおりのことが行われるのかもしれません。でも、『本当にこれでいいのだろうか』と、考えたら苦しくなります」

とAさん。



続きは、「郡山レポート(3)」でご報告します。

(文責/吉田千亜)






郡山測定レポート(3)


(「郡山市測定レポート(2)」の続きです)

ホットスポットファインダーで、Bさん宅の屋根も測定しました。屋根の構造が平になっているため、線源は屋根なのではないか、とBさんは以前から考えていました。

郡山市の除染計画では、民家の屋根は除染対象外です。郡山市は、屋根・ベランダは除染対象外になるため、自分で行うしかありません。屋根には1度も手を着けていない、とBさん。

環 境省による「除染関係Q&A(平成25年6月19日版)」によると、「2階以上の壁や雨樋及び屋根の除染については、生活空間における空間線量率 の低減への寄与が比較的小さく基本的には不要と考えられることから、財政措置の対象とはなりません」とあり、補助金対象外になるのだとか。住民の間では「瓦が壊れたら、弁償になるから、やらないんじゃないか」と噂されているといいます。


屋根の上で測定するこどもみらい測定所の石丸さん
屋根に実際にのぼって測定してみると、およそ0.2μSv/h~0.3μSv/h。
室内の線量とそれほど変わりませんでした。

「屋根の線量は素材に左右されると思います」

とこどもみらい測定所の石丸さん。

瓦屋根は除染してもなかなか落ちない、という話もあります。
「どこが高いのかは、実際測定してみないと分からない」と、この日は何度も感じました。

屋根が室内の線量を上げる原因ではない、となると、どこから放射線が飛んできているのか、検証が必要です。石丸さん曰く、窓ガラスからの線量、四方八方からの線量ではないか、とのことでした。
家の敷地を一歩出ると、いたるところに0.5~0.9μSv/hの場所があり、裏手にあった林も0.8~1μSv/hほどありました。

除染した自宅は緑~青だが、周辺は赤(0.5μSv/h以上)
除染をしても、時間が経つと元の数値に戻ってしまう、という話はよく聞きます。除染の効果が今後も続くのかどうか、注意していきたい、とBさんはお話されていました。

ちなみに、右上の写真はBさんのご自宅周辺の線量マップです。除染した建物周辺は緑~青(0.1μSv/h~0.3μSv/h)ですが、自宅敷地を一歩出ると、赤(0.5μSv/h以上)になることがわかります。



◆通学路の測定

その後、郡山市内の別の場所に移動し、子どもたちが通う通学路の測定を行いました。

子どもが通う通学路は、町内会の除染があったものの、市は担当しているわけではありません。手つかずのところもあります。
通学路に24時間いるわけではありませんが、毎日毎日、通い続けるわけです。
それに、子どもの場合、通学路をただ歩くだけではありません。登下校の途中で、興味をひくものに手をのばすことは、容易に想像がつきます。


通学路の、道端(土や草のあるところ)は、線量が高く、道の真ん中は道端よりも低くなります。

測定しました。

道の端

0.602μSv/h


次は、道の真ん中です。
道の真ん中
0.326μSv/h
道の端と、真ん中で約0.3μSvの差があることがわかります。

たとえ子どもの被ばくをさけるためとは言え、車の走る道路の真ん中を歩くわけにはいきません。
通学路の徹底した測定を早急に行い、実態を把握してほしいと思います。
2013年10月18日に、環境省から「GPSと連動した計測装置の実証試験報告書」が出されました。
自治体によるホットスポットファインダーの導入が待たれます。


道端と真ん中だけではなく、身体を半転させただけ(センサーが30cm移動しただけ)で、0.2μSv/hの違いが出た場所もありました。


続きは、「郡山レポート(4)」でお伝えします。

(文責/吉田千亜)

















郡山測定レポート(4)

こどもみらい測定所の所長・石丸さん、郡山市在住のAさんと、ホットスポットファインダーで郡山市内を測定(2013年9月)したレポートの続きをUPします。(※このレポートは、2013年10月に書かれたものです)

* * * * *

写真は、郡山市内のとある湖です。ぐるりと散歩コースが整備されていて、近くの中学生のマラソンコースになっている道路です。

湖の周辺は、0.3~0.4μSv/h。

赤→0.5μSv/h以上
オレンジ→0.4μSv/h以上
黄色→0.3μSv/h以上

です。

何度も言うようですが、0.3~0.4μSv/hは、事故前の10倍です。でも、郡山市にいると、0.3μSv/hを「低い」と感じてしまいます。「高い」「低い」という言葉を、どう遣えばいいか、迷いますが、このレポートでは、事故前よりも高ければ「高い」と考えています。

測定の結果写真を見るとよく分かるのですが、ある部分だけ線量がとくに高くなりました。白い矢印のところからです。だいたい、腰の高さで、0.5~0.7μSv/h。地表近くでは植え込み部分で1μSv/hを超えたところもありました。(ちなみに、このマラソンコースは腰の高さで測定している数値です)

じつはこの白い矢印部分から、道路の舗装が変わっているのです。


湖の周りは、アスファルトで舗装された道でした。矢印から左側は、「透水性舗装」と言われている道路で、路面に降った雨水を、舗装内の隙間から地中へ浸透させる機能を持たせていました。
つまり、表面がザラザラ、ボコボコしています。(イメージ写真を下に貼ります)



「透水性舗装」は、その名のとおり、水はけをよくするための舗装なのですが、実際は、隙間に砂、泥が詰まることから数年で機能低下が起こるという欠陥が指摘されています。その、隙間に、放射性物質が入りこんでしまったようです。
アスファルト舗装から透水性舗装にかわる境目(写真上:白い矢印)から、突然、線量が上がるのです。

もし舗装の種類によって線量に差が出るとわかれば、子どもたちが気をつけるべきポイントのひとつとして、伝えられるかもしれません。

現在、この透水性舗装の部分を含めたマラソンコースは、測定のあと、2週間かけて除染がされました。
Aさんが、この測定結果を、郡山市長に届け、その結果をみた市長が「中学生のマラソンコースの測定値」という事実を重く受け止め、緊急除染を指示したということです。

前にも書いたとおり、ホットスポットファインダーは、環境省のお墨付きをもらっている測定器です。そういった信憑性のある測定結果を、自治体に届け、要望を伝えることは、できるだけ子どもを被ばくから守る第一歩として、大切なことかもしれません。
Aさんは、「今後もチャンスがあれば、(測定結果を)届けたい」と話してくださっています。








(文責/吉田千亜)

(郡山測定レポート(5)につづく)




郡山測定レポート(5)

ホットスポットファインダーで測定をするために、福島県に何度か伺っていますが、伺うたび、ハッとする景色に遭遇します。

12月11日に伺ったときに出逢った景色は、大きな半円を描く虹でした。





この日は、Aさん(郡山市在住)と、Cさん(郡山市在住)そして、こどもみらい測定所の石丸偉丈さん、服部夏生さん、ADRA JAPANの小出一博さん、私(吉田)の6人で、小雨の降る中、測定を開始しました。


Cさんは、幼いお子さん2人のお母さん。子どもの通学路と、親戚のお子さんの幼稚園付近の測定をしてほしい、ということでした。

今回の測定でも、やはり子どもの生活環境の中に、ホットスポットが点在していることがわかります。


◆道路に垂直に交わる側溝 



側溝というと、道路に沿ってあるもの、というイメージがありますが、Cさんのお子さんの通学路には、大人の足で約20歩ごとに、道路と垂直に交わる側溝がありました。
(郡山市内の別の場所でも、そういった側溝を見かけました。)

その側溝は、道路の下を通り抜けるのですが、その道路と交わるところ(イラストの赤い○の部分)には、落ち葉や、石、落とし物(長靴やボールなど)が詰まっています。
そこの近くは、周辺(0.2~0.3μSv/h)よりも高く、0.8~1.0μSv/hほどありました。
堆積物と一緒に、放射性物質も溜まっているのだと思われます。

この測定をしたのは午前中だったのですが、午後、別の場所の同じ作りの側溝の中から手のひらサイズの石を拾いあげる下校中の小学生を、走る車の窓から見かけました。

子どもの下校時間は、ちょっとした「散歩」と同じです。当然、気になるものには手がのびるでしょう。
ある程度認識した上で現状に折り合いを付ける大人の行動と、何も分からないまま放射性物質はないことにされる子どもの行動というのは、別のものだと思います。

子どもが、常に注意し続けて生活するということは難しいかもしれませんが、せめて学校などで、「ここには放射性物質がたまりやすい」という知識の共有があると、いいのでは、とAさんとお話ししていました。


◆雨樋のない屋根から落ちる放射性物質のたまり場所



測定しながら同じ歩調で進んでいると、突然、0.2μSv/hほど線量があがった場所がありました。
「なんだろう?」と、付近を測定してみると、雨樋のない屋根から雨の落ちたことが分かる場所(下イラスト)が原因であると分かりました。地表5cmで、1.5μSv/hを超えます。

雨の落ちる場所が、通学路側にあったため、付近一帯の線量が、周囲よりも上がったようでした。
そこは、人家ではなかったので、手が入れられていない(除染はされていない)場所でした。

このような「人は住んでいないけれど、持ち主はいて、かつ、子どもが近くを歩く土地」の除染は、どうたらいいのかということは、問題のひとつではないかと感じます。



◆雨樋下が落ち葉や木に隠れている場所

上の「◆2」と同じく、通学路を歩いていて、ふと、0.3μSv/hほど線量が上がった場所がありました。
通学路に面したところに、雨樋から流れる水の出口があり、その出口が、ちょうど落ち葉や木で隠れていました。
その付近は2.0μSv/hを超えていました。

その場所に24時間立ち続けることはありませんが、子どもが毎日歩く通学路である以上、気配りがされてもいいのではないか、と思います。





◆理由がまったくわからない、ホットスポット

ホットスポットファインダーで測定していると、まったく理由がわからないのに線量が高い、という場所があることに気がつきます。
雨樋下や、屋根の雨水が落ちる場所、堆積しやすい場所、吹きだまり、木の根元、舗装の様子など、原因を予測できるケースもあるのですが、どんなに考えても変だな、という場所です。

唯一思いつくとすれば、「除染した土をここに置いたのかな」ということだけですが、それも、本当のところは分かりません。

このケースは、「郡山市」と書かれたポール(イラスト)が並ぶ、ただ1本の根元だけが、2μSv/hを超えた、不思議なケースです。
まったく同じポールが並ぶだけに、その線量の違いは、奇妙でした。

こういった場所があることを考えると、ホットスポットファインダーで測定をして、詳細なマップを作ることも、防御ためには必要な方法であると感じます。







冒頭の虹の写真ですが、じつは、この虹は、予定していた測定がほぼ終了した夕方、あらわれた虹でした。
1日中、「この線量が高い原因は何か」を考え続けていたので、思わず、「この意味は何か」と考えてしまいました。


震災からもうすぐ4年目を迎えますが、子どもをできるだけ守ろうと考え、努力し続けているお二人(Aさん・Cさん)とご一緒してお話を伺っていたので、「見えないものを考え続けることはしんどい」と改めて感じた1日です。虹と言えば「希望」のイメージですが、自然を汚してしまった申し訳なさや、それを取り戻す課題の大きさ、途方もなさも同時に感じて、複雑でした。

疲弊しながらも、今なお、考え続けている保護者も多くいます。本来は行政側が率先して被ばくの防護対策をしてほしいところですが、現状では、子どもたちが過ごす公共施設の除染のみに留まっています。できるだけ被ばくを避けて生活するためのしくみが作られてほしいと心から願います。

Aさんは、これからもこういったデータを集め、市長に届ける機会を作りたい、とお話してくださいました。

(文責/吉田千亜)


※ご一緒させていただた、服部夏生さん(こどもみらい測定所/常緑編集室)の詳細なレポートもご一読ください。こちらのブログでは、ホットスポットファインダーに表示された数値と共に、測定した土壌の結果などもきちんと示されています。