ホットスポットファインダー(HSF)という測量計があります。
小型の検出器と計測ソフトの入ったタブレット端末をつないだセットで、タブレットには測定値が一秒ごとに表示されるものです。衛星利用測位システム(GPS)と連動しているため、マップ上でも測定値を見ることができ、マップの保存も可能です。
特徴は、小型簡易測定器の40倍以上の感度を持っていること。
また、スペクトルが見られるので原発事故由来の放射性セシウムなのか、確認ができます。
測定器は肩からかけられるので、大人の腰の高さの線量を測定できます。
この測定結果は、「DAYS JAPAN」の表紙でもおなじみです。
また、千葉の市民放射能測定室「しらベル」も、機器を導入しています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20130509/CK2013050902000139.html
この、ホットスポットファインダーで郡山市を測定した様子をレポートします。(2013.5.15)
■モニタリングポスト周辺の除染とまだらな汚染
モニタリングポストの数値があたり一帯の数値かと思われがちですが、必ずしもそうではありません。「モニタリングポストを信用していない」という方もいらっしゃいますが、そもそもモニタリングポスト周辺だけではなく、全体が、まだらに汚染されていて、かつ、時とともに雨などによる移動もしているので、放射線量の数値に関しては「一帯を表示する数値」はない、と考えたほうがよいように思います。
数m先のモニタリングポストが0.4μSv/hを表示しているのにも関わらず、手元のホットスポットファインダーの数値は0.7μSv/hという公園もありました。
「モニタリングポストの周辺だけ除染してあるのではないか」という指摘もありますが、実際に福島県災害対策本部原子力班モニタリングチームも、「可搬型モニタリングポスト等設置施設(570箇所)における除染作業の実施状況について」という調査をしています。
その結果、実際に99ヶ所で除染されていたことが分かり、今後もモニタリングポスト周辺を除染した場合、事実を公表すると報告しているのです。(最新は平成26年3月31日に発表)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec_file/monitoring/etc/kahangatampjyosenjyoukyou140331.pdf
■ホットスポットに建つ家
郡山市に住む、Kさんのお宅に向かうクルマの中でも測定を続けましたが、0.15μSv/h~0.8μSv/hの変動がありました。だいたい、0.3~0.4μSv/hを推移していました。
Kさんの自宅近くの幹線道路から細い脇道に入ると、それまで0.3μSv/h周辺を推移していた数値が突然上昇し、0.8μSvになりました。その、線量の上がり方がとてもはっきりしていたので、驚くと、「脇道に入ったら突然高くなることは、事故数ヶ月後から知っていたんです」と、そのKさんはいいます。近所の方が2011年の夏頃に、線量計を手に入れ、測定してくれたそうです。
家の裏手は山。測ると、1μSv/hを超えます。
震災数ヶ月後は、玄関が2μSv/h以上あったと言います。
「だから0.3μSv/hと言われると『低くていいわね』という感覚になっちゃうんですよ(Kさん)」
室内も線量は高く、2階の子ども部屋が1μSv/hほどあったので、1階のできるだけ中央の部屋に子どもがいられるよう居場所を変えたとか。
「近所でいいから、子どもを避難させたい。ホットスポットになってしまったこの家よりはいいだろう、と思うんです(Kさん)」
何度も考えているが、そう簡単なことではありません。
「ここは子どもが幼稚園バスを待つ場所なんですが、どのくらいですか?」
とKさんに言われ、数値を確認すると、0.5~0.7μSv/h。
きっと以前はもっと高かったはずですよね、とため息混じりに言います。
子どもたちが震災直後にもよく遊んでいた、という場所も、同じく0.5~0.7μSv/hでした。
■罪のない子どもたちが奪われた権利
自宅周辺の線量が分かってからは、子どもたちは外遊びができなくなり、友達の家でばかり遊んでいる、と言います。
子どもが自由にのびのび外で遊ぶこと、自然と自由にふれあうことが叶わない現実が、ここにはあります。
(郡山測定レポート(2)に続く)
(文責/吉田千亜)